大会テーマ:予防から理学療法の未来を共につくる

 第24回宮城県理学療法学術大会は、第23回に掲げたテーマ「予防」を継続し、「予防から理学療法の未来を共につくる」としました。予防に対する理学療法の可能性、リスク管理、理学療法士としての予防への役割と関わりなどを学び、“予防から見えてくる私たちの未来”について共に考える大会となりました。

人類は自然界の一部です。ときに自然は人の生命活動をも脅かしかねない試練を与えます。人間は、その事象が起こる条件や根拠を科学し、経験から多くを学び、予防は発展してきました。18世紀後半からの産業革命(industrial revolution)は、人工の未来世界をつくり続けていますが、自然界に対するリスクを科学によって完全には制御できないまま、人間界は発展し続けています。

 2020年1月頃より中国武漢省が発生源と思われる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、瞬く間に世界中を席巻しました。まさか、マスクの着用や手指消毒が常態化し、先の見えない自粛生活や社会の擾乱状態が続くとは、前回大会時には思いもよりませんでした。

COVID-19に対する特効薬や効果が期待できるワクチンが開発途上(2020年8月時点)であるため、感染を防ぐ方策として非接触・非接近の働き方や生活様式が続いている現状です。その結果、オンライン上での情報ネットワークは急速に普及し、“顔が見える”繋がりや広がりに利便性は感じるものの、一方で、コミュニケーションに課題を感じる場面も増えてきました。

 生物は古来より、生きる空間と時間の中で生態系を築いてきました。生きもの同士の関わり合いはその空間での共生(symbiosis)関係となり、時間軸の流れで見ていくと共進化(co-revolution)と言われる相利共生の共進化、片利片害の共進化、などを知ることができます。

 私たち理学療法士(PT)が理学療法の未来を共につくるためには、どのような空間で繋がりと広がりをつくるのか、どのような時間軸で目的に向かう価値をつくり続けるのか、いかなる立場で理想とする社会をつくり、その中で社会の一員として繁栄していくかを問い続け、行動しなければなりません。まずは、私たちPT同士が、“対話による知の創造”を意識して行動することです。対話とは、対立する意見をも建設的に受け止めることであり、決して敵対するものではありません。

 日頃から仲間と共に理学療法を論じ合い、PTとしてのcareerを積み上げ自尊心(self esteem)を高めること。PTのcommunityの中でお互いを確認し承認する支援関係を醸成すること。そして、PTの強い結束の下で社会の人々と力を合わせ、社会的意義(social significance)のある働きをすることで相利共生の共進化ができると思います。  

 PTの理想の未来に向かって様々な予防に挑戦し理学療法を進化(evolution)させましょう。本学術大会では、保健・医療・福祉・教育などに関する視点と経営(未来創造)的視点からも、予防をmanagementすることも学んでいきたいと考えています。

 ポストコロナ時代は、新たなrevolutionの波がやってきそうです。このChangeをChanceと捉えChallengeを共に続けてまいりましょう。

 

2020年9月吉日

 

第24回宮城県理学療法学術大会

大会長  渡邉 好孝

(医療法人社団光友会・一般社団法人宮城県理学療法士会会長)