<大会テーマ>

Call and Response

-掛け合い・学び合い-

開 催 趣 意 

  

 第25回宮城県理学療法学術大会テーマは「call and response - 掛け合い・学び合い -」としました。直訳すると“呼びかけと応答”です。

 Digital Transformation(DX)によって、進化し続けるIT技術が浸透し、人々の生活が既存の価値観や枠組みを根底から覆すようなものへと変革し始めています。

 人と人とのコミュニケーションはオンライン化が浸透し、時間と空間の壁を越えての情報伝達が可能になりました。デジタルツールを駆使し、様々なプロセスを効率化し、時代の進化と暮らしの面白さを享受できるようになりました。

しかし、一方でデジタル弱者にとっては、素直に受け入れ難い感情としての疎外感や諦め感があり、不安・不便・不満を覚えることが少なくないという事実もあります。なお、この情報格差は、日本だけではなく、国際的に「デジタル・デバイド(digital divide)」と呼ばれ、地球規模での課題であるともいわれています。

 空気を揺らしながら対面でコミュニケーションする機会が減少している今だからこそ、相手の立場や意見を尊重しながらも、自分の意見や感情を適切に表現する能力が求められます。つまり、支配的や服従的ではないconsultation&supportの場で、論理的(logical)に考えながらも柔らかに主張(assertive)ができること。そして、お互いが歩み寄り共鳴(心の響き)し合いながら繋がりを感じることができるCommunity形成が大切になります。

 自分の中では論理的に考えを巡らしているものの、リモート会議や学習の場では、上手に主張(話す)するのが苦手。相手にどう伝わる(思われる)のかが不安、場の空気を読んでいる間に本音も言えずに時間が経ってしまった。意見や質問があっても発言に自信が持てず言葉として喉元を通過させられない、チャットで質問や確認をしようと思っている間にリモート終了。リモート慣れするには、世代によっては、もうちょっと時間がかかりそうです。

 これからは、Web環境下(オンライン)での対話がスタンダードになり、むしろ足を運ぶ(オフライン・・?)機会が特別なことになりそうな気配です。いずれにしても、発言者はニュアンスが伝わるコミュニケーション能力を高めること、そして誰もが自由に発言できるムードであることが新しいスタイル(ニューノーマル時代)の成長につながると思います。

 理学療法士(PT)の成長のための心理的契約(3つの動機)として。個人のCareer面では専門性を高めるための内発的なもの。組織のCommunity面では他者から認められていると感じる一体感と所属意識。さらに、社会的な意義では自分と組織の働きが社会に対して善いことをもたらしていると信じられること、つまり自尊心を持ってPTとしての仕事ができることです。

PT同士が成長するために必要なことは、仲間の成長と成功のために声援と支援を惜しまないこと。そして、呼びかけと応答の基本は、自分と相手の“立場と視点と都合”を配慮し、善い(幸せ)行動を共にすることです。“自分にとって楽しいこと・相手にとって嬉しいこと・社会にとって好ましいこと”を「一緒にやろうぜー!!」と、掛け合い・学び合うのが本大会の神髄です。

 幸運は偶然には起きません。自らが偶然を味方につける行動をすることです。ジョン・D・クランボルツ氏のプランドハプンスタンス理論では、①好奇心:絶えず新しい学習の機会を模索し続けること②持続性:失敗に屈しないで努力し続けること③楽観性:新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること④柔軟性:こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること⑤冒険心:結果が不確実でも、リスクをとって行動をすることを挙げています。

これら5つの行動特性を備え、偶然の出来事や予期せぬ出来事に対し、最善を尽くし対応する積み重ねができる人が、より善いキャリアを形成できるとも述べています。

 本大会が新型コロナウイルス感染症の影響を受けずに開催できることを願うばかりです。Webでの公開もあり、ハイブリッド形式での開催ですが、どうぞ皆さん会場に足をお運びください。

 皆様の2021年までの進化の確認と2022年からの進化のスタートを切れる場となれば幸いです。

  

 第25回宮城県理学療法学術大会

大会長  渡邉 好孝