シンポジウム2


シームレスな卒前・卒後教育の実現に向けて

司会】鈴木 誠 氏(東北文化学園大学)

 

講師】

 小野寺 裕志 氏

(気仙沼訪問看護ステーション)

【はじめに】

 一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団は2011年3月11日に発災した東日本大震災後、2012年10月に(公社)日本理学療法士協会、(一社)日本作業療法士協会、(一社)日本言語聴覚士協会が、財団法人訪問リハビリテーション振興財団基本財源に出捐し、設立されました。2012年11月に東日本大震災復興特別区域法(以下、復興特区)における訪問リハビリテーション事業所整備推進事業に基づき、福島県南相馬市に「浜通り訪問リハビリステーション」、2013年4月に岩手県宮古市に「宮古・山田訪問リハビリステーションゆずる」、2014年10月に宮城県気仙沼市に「気仙沼訪問リハビリステーション」設置しました。気仙沼訪問リハビリステーションは数度の復興特区延長を行い、復興特区の終了に伴い、現在は気仙沼訪問看護ステーションとして運営しています。

 

【新卒採用】

 2014年10月に気仙沼訪問リハビリステーション開設し、2017年4月に新卒の作業療法士2名を採用しました。はじめての新卒採用となり、事業所共通の新人研修会開催や同行訪問、朝勉強会の実施など試行錯誤しながら新人教育を進めてきました。新人教育を行いながら通常業務もあり教育と運営とのバランスに苦慮しました。

 

【地域での活動】

 2011年3月の東日本大震災後には、宮城県理学療法士会で気仙沼ブロックが編成され、通常の研修会とは別に全国でも履修率最低レベルであった新人教育プログラムを「地域でPTを育てる」という使命のもと、1年で終わらせられるように、日程調整など工夫して実施してきました。症例発表実施の際は査読者を他事業所PTに依頼し、アドバイスいただくことで、普段はなかなか関わることのない他事業所の先輩たちとの交流を持つ機会を作ることができました。

 

【今後の活動】

気仙沼支部(令和3年12月現在)はPT61名のうち、20代・30代合わせると53名と、約86%が若い世代となっています。急性期、回復期、生活期とそれぞれ違った必要な役割があり、私たち訪問業務も地域の病院、施設との連携が重要であり、地域力を高めていくことに繋がるので、今後も「地域でPTを育てる」ことを使命とし支部活動を進めていきたいと思います。


講師】

 庄司 剛仁 氏

(石巻健育会病院)

【はじめに】

 当法人である医療法人社団健育会の概要と当院リハビリテーション部における卒後教育について内容や特徴、目的について説明していく。当院は回復期病棟56床、一般病棟52床、療養病棟60床計168床の民間病院である。その他事業所に通所リハビリテーション事業、訪問リハビリテーション事業も有している。関連施設として介護老人保健施設、看護小規模多機能型居宅介護事業所、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業、地域包括支援センターなどの機能も有している。

 

【卒後教育】

 新入職スタッフは3年間で書類業務関連や臨床業務を含めた一般業務が滞りなく遂行できることを目標に当院独自で考案した自立シートを用いて指導を行っている。自立シートは、可能な範囲で統一した指導評価が行えること、指導者が変わってもスムーズな情報共有が図れることを目的で考案され、運用している。4年目以降では、新人教育のサポートやTQM活動、臨床研究、学生指導、学会発表など自身がスキルアップできるようセラピストに合わせキャリアを育成している。教育に関して、特にリスク管理を重要視しており、月に一度過去のインシデントを例にディスカッションを行い、対策方法の確認や実技練習を行っている。臨床技術については、昨今のコロナ禍において、接触リスクをさけるため実技研修のほとんどが難しくなっていたが、臨床現場の中で工夫しながら技術・知識の習得を図れるようになってきている。

 

【今後の課題】

 中堅層が増えたことで、若手管理職やリーダクラスの育成についてもマネジメント研修などの教育システムも考えていかなければならない。オンラインでの研修が充実してきている中で他施設療法士とのディスカッションが少なく意見交換を交わす機会が減ってきている。世代に合わせた教育方法、手段を柔軟に変化させながら教育していく必要があると考えている。