教育講演2

疼痛に対する新たな評価・治療方法を共創する‐理学療法士が行うこと‐


今井 亮太 先生

(大阪河﨑リハビリテーション大学)

 疼痛研究の発展により,2018年に国際疼痛学会が提唱する痛みの定義が41年ぶりに改訂された.定義には付記事項が6項目あり,その中でも,「痛みと侵害受容は異なる現象である」,「痛みは常に個人的経験であり,生物学的,心理的,社会的要因によって様々な程度で影響を受ける」ことが記載されている.つまり,疼痛評価においてVAS(Visual Analogue Scale)やNRS(Numerical Rating Scale)を使用した疼痛強度の評価だけでは,痛みを有する患者を捉えられないことが理解できる.世界では10年以上前から,疼痛患者の心理社会的要因などの評価を取り入れ,理学療法に活用している.本講演では,疼痛に対する新たな評価や治療について触れるが,その前に,世界の理学療法として基礎となっている痛みの知識や評価法をまずは提示したいと思う.急性疼痛や術後疼痛に関して,炎症期とともに痛みが治まると軽視している人がまだまだ多いのは事実である.また,定義の付記事項には「痛みは人生での経験を通じて痛みの概念を学ぶ」とも記載されており,患者各々の痛みの感じ方が違うため,非常に複雑であることを理解して向き合わなければならない.

 慢性的な痛みで苦悩を抱える患者を捉えるために,また急性疼痛や術後疼痛を慢性化させないためにも,セラピストが痛みに関する評価とリハビリテーションを適切に行うことが重要となる.明確になっていないこともあるが,本講演が良い話題提供になればと考える.