大会長企画講演1
運動学習の視点から理学療法と誠実に向き合う -臨床で行う運動学習評価の提案-
これまで、運動学習研究はスポーツ心理学領域で盛んに行われ、多くの知見が蓄積されてきた。しかしながら、運動学習に困難性をきたす対象者を前提としたリハビリテーション領域に目を向けると、解決すべき課題の多さに一抹の戸惑いを覚える。
主たる理学療法の内容に、「対象者の習得すべき動作獲得のサポート」を挙げるならば、対象者の運動学習に関わる丁寧な評価の重要性が理解できる。具体的には、次の3つのことを評価し、運動学習支援に努める必要があると考えている。
運動学習能力は、対象者が有する運動を効率的に学習する能力のことである。運動学習能力は、加齢や神経系の疾患によって低下するため (Howard, 2013; Russo, 2021)、動作習得時期を推測するためにも、どの程度の運動学習能力を有しているのかを評価する必要がある。運動学習の仕方は、対象者が運動を学習する際の癖や特徴のことである。例えば、焦点化しやすい注意の部位、好むフィードバックの頻度や種類などがある。これらは、対象者の運動学習の支援方法に活かせる情報となるため、運動学習能力の高低にかかわらず把握すべきである。運動学習の阻害要因は、対象者の運動学習能力が低下している場合にみられる、運動学習を困難にしている要因である。運動学習を阻害する要因には、運動機能、感覚機能、精神・心理的側面など多岐にわたるため、それぞれの把握が必要になる。
本講演では、対象者の習得すべき動作獲得のサポートのために、これら3点を通常の理学療法プロセスに組み込むことを提案する。特に、どのタイミングで何をどのように組み込むのかについて、具体策を提示する。これにより、実践的で誠実な動作習得のサポートができるようになることに貢献したい。
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